学校日記

「違くない」「違かった」

公開日
2016/05/15
更新日
2016/05/15

校長室より

 私は国語科の教員です。中学生に25年以上も日本語を教えてきました。私自身の言葉遣いが完成したものだなどと、おこがましいことを考えたことはありませんが、言葉に対して人よりは若干敏感なことは確かだと思います。
 そんな私がここ何年も気になっている言葉が「違くない」「違かった」です。この言葉は、私が幼いころには身の回りには存在しなかった言葉です。いつごろから耳にするようになったのかは定かではありませんが、どうしても違和感が拭い去れません。私自身は間違いなく使わない言葉です。しかし、現在学校や社会の様々な場面で普通に使われていることは否めません。最近のコマーシャルのセリフでも使われていました。
 「違う」は「笑う」「起きる」「話す」「投げる」などと同じで、「ウ段」で言い切る動詞です。「笑くない」「起きくない」「話かった」「投げかった」などという言葉は聞いたことがありません。動詞には「く」や「かっ」は付かないのです。では、「く」や「かっ」が付くものは何かというと、それは形容詞です。「赤い」「楽しい」「うるさい」「寒い」などのように「い」で言い切るものです。「赤くない」「楽しくない」「うるさかった」「寒かった」のようになります。つまり、「違う」という動詞が形容詞のように使われていることに問題があるのです。
 「言葉は時代とともに変化するものだ」「『違かった』は方言として存在するのだから間違いではない」という意見もあるようです。しかし、我々国語の教員が教えている文法には当てはまらないものであり、これを認めたら我々は自分の指導を否定することになってしまいます。国語科の教員にかかわらず、全ての教員は率先して生徒の言語環境を整えていかなければいけません。そのためにも、自分自身の言葉を磨くことを怠ってはいけません。かくいう私自身も、自分の発言に「今の表現は間違っていたな」「言葉遣いが適切でなかったな」と反省することが後を絶ちません。自戒の念も込めてこれから一層精進してまいりたいと思います。
 「正しい日本語」「美しい日本語」が未来を背負う子どもたちにきちんと身に付くように、ぜひご家庭でも「言葉」に関心をもって、話題にしていただければと思います。

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